訴状の続きです。
4 下着の返還が容易であった事実
前述のように、被告は、原告の担任であり部活の顧問であった。下着を奪ったのが平成 元年11月当時であることや、被告と原告が何度も二人きりになる機会があったことからすると、被告が原告に対し下着を返還することは極めて容易であった。
また、被告と原告の母親はクラスの活動や部活動を通じ顔見知りであり、下着を渡すことを躊躇するような関係ではない。
そして、被告が原告に性犯罪を犯していたことからすると、かかる下着を自己の犯罪隠ぺい目的で所持し続けている可能性は高い。
このような場合、被告が現在も下着を所持している可能性は極めて高いと言える。
6 原告が異性愛者であることと被告の性癖
原告は、中学当時交際していた女性の恋人がいた。また、その後同性と性交渉があった事実は一度も存在しない。
かかることからすると、わいせつ行為が原告の同意がある中で行われたという事はありえない。
7 被告が下着を現在も所持していると強く疑われる事実
被告は、メールにおいて引っ越しの際に下着を捨てたと述べている。
もっとも、被告は 原告が卒業後、平成10年当時まで約9年もの間下着を返還することなく所持していた。被告と原告が身長も体重も異なり、下着のサイズも異なること。
下着は摩耗することなどからすると、通常他人の下着を理由なく長期間保持する理由は考え難く、その間まで所持しておくこと自体が異常である。
しかし、被告は いかなる理由で所持を続けたかについて説明していない。
また、被告が引っ越す前に住んでいた住所は、上本郷であるが、現在の住所までは車で10分以内の場所である。また、部屋の広さも現在の住居のほうが広いことが推測される。
通常引っ越しの際に捨てるのが、持ち運ぶのが困難な家具類である(ここは少し違うかな?と思います)。
原告のブリーフは、素材も固くないため折りたためばポケットに入るサイズである。
被告が長期間下着を返還せず保持していたことも併せ考えると、引っ越しは、下着を捨てる合理的理由にはならない。
また、自己のわいせつ行為を隠蔽するため奪ったことを考えると、車の中などに見つかりにくいように隠すことは極めて容易でありその可能性は高い。
8 訴訟の提起に至った理由
⑴ 原告は、平成29年11月頃、松戸市教育委員会に自己の性被害を理由とした、被告の退職金の返納を求め、調査を依頼した。しかし、被告は、市教委からの調査に全く応じず平成29年12月末に調査は打ち切りとなった。
その後平成30年4月4日に、被告が原告に下着を所持していたことを認めたため、同年5月に市教委にかかる事実を原告は伝えた。その後、市教委は原告に無断で、被告に書留を送付し、単独で調査を行った。
しかし、被告はかかる調査にも一切応じなかった。
⑵ その後、市教委が調査をしないため、原告は、被告に対し、数度メールで連絡し当時のわいせつ行為に対する説明を求めた。
もっとも、被告は糖尿病で具合が悪い、そのうち返事するなどと言い、説明を拒否した。そして、最後にはメールをブロックした。
その間、被告は糖尿病で誰とも会えないなどとメールでは言っていたが、その裏で市教委の要請を無視し、当時松戸市内の中学で勤務していたSと、退職していたWらと連絡を取り、私的理由で遊びに行くなどの行為を繰り返していた。
⑶ 昨年2月2日にXがWに電話したことで、被告が他校で問題を起こしたこと、Wがその時期までに、原告の性被害を何らかの形で認知していたことが判明した。
もっとも、Xとはその後連絡が取れない状態であり、内容を再度確認できないことが続いた。
⑷ 今年3月9日Xからメールで、Wが、原告の性被害について認知があったことは事実であるとの証言が取れた。
⑸ かかる一連の経緯から、被告が所持している原告の下着が、わいせつ行為の際に奪ったものであることを強く推認させるとの証明が可能となった。
そして、かかるわいせつ行為の発覚を防ぐため取得した下着を、引っ越したからと言って他の場所に保管するなどの手段をとらず、捨てる可能性は極めて低い。
このことから、被告が現在も下着を所持している可能性が高いことが推認される。そのため、今回訴訟を提起するに至った次第である。
9 下着の返還を求める必要性
⑴ 被告が現在所持しているものが原告の下着であり、また、その下着には被告の筆跡でクリスと書かれていることからすると、何も知らない人間に、被告が下着を見せ、原告が同性愛者であるかのような心証を容易に作り出すことができる。
現在パートナーシップ制度を定める自治体が多い中であっても、同性愛行為の被害に遭った場合、たとえそれが異性愛者の被害者の帰責性のない被害であっても、いわれのない批判を受けることが存在する。このことは池袋の事故の被害者が誹謗中傷を受けたことからも明らかである。
原告は、本来子供のころから、被告らに脅迫されることなく、また、かかる誹謗中傷の恐れを受けることなく生活する利益を有していた。
かかる不安が存在すること自体が、原告の現在および未来に対する重大な危険であるといえる。
そのため、原告はかかる被害から自分を守るため、下着の返還を受ける強い利益がある。
⑵ (ここはプライベートな部分なので省略します)
かかる場合、被告が原告の下着を周囲に見せびらかすこと等による、重大な名誉の侵害が原告並びにその周囲に発生する可能性が極めて高いと言える。
また、被告は、原告が今年3月に特定記録郵便で下着の返還を求めたのに対し一切の説明を拒否し誠実な対応を拒んでいる(甲17号証)。
このことからも、原告は被告から何らかの形で名誉の侵害を受ける可能性が高い。
そのため、下着の返還を受け将来の自己並びに周囲の人間の名誉を守る強い利益を有していると言える。
⑶ また、被告が市教委や原告からの説明を無視した一方親しい知人らと遊び歩き、平然としていたことからすると、被告が過去の過ちを悔いたと理解することはできない。
かかる場合、報復目的で下着を使用して、原告の名誉を著しく棄損する危険が存在すると言える。
⑷ さらに、現在では情報技術の発達により、誰でも情報を伝達できることが容易になった一方、不特定多数人に一方的で誤った情報が流布された場合、その被害を防ぐことが困難となっている(甲18号証)。
また、原告が大学生の時は予想もしなかったスマホやAIなどが現在は発達していることからわかるように、未来においても、情報技術が発達し予期しえない形で名誉が侵害される危険が存在する。
かかる危険をすべて防ぐことはできないが、現時点において、かかる危険の発生を防ぐ必要がある。何より、原告は誰にも誹謗中傷受けることなく、人生を全うする権利を有している。
このように、原告には下着の返還を求める強い必要性がある。
10 他の解決方法について
民事調停については、被告が真摯な態度で応じると約束した場合は、考慮する。
その際には、奪った下着を返還することが必要となる。
仮に下着を返還することができない特殊事情があるのだとすれば、そこに至った経緯等を詳細に説明し、原告が納得することが必要となる。
また、被告が下着を所持するに至った経緯から、原告の名誉が将来にわたり侵害されることを防ぐため、被告が下着を用いたり、また、原告に対する不当な誹謗中傷による名誉の侵害をしないことが条件となる。
和解についても、下着の返還が必要となる。
また、仮に下着の返還が認められない特殊事情がある場合は、そこに至った経緯等を詳細に説明し、原告が納得することが必要となる。
また、民事調停と同様に、原告の名誉権が将来にわたり侵害されないように確約することが条件となる。