1. 部活動の地域移行:問題は本当に解決するのか?
部活動の地域移行は、教師の負担軽減や多様な学びの提供を目指して進められています。
しかし、この移行だけですべての問題が解決するわけではありません。
むしろ、朝日新聞の記事では、学校外での指導者は教育訓練を受けていない場合が多く、暴力やハラスメントのリスクが高まることや、子どもたちのスポーツ活動が結果重視の「勝利至上主義」に偏る懸念があることなど様々なリスクは生じる可能性があるなど、このことから生じうる問題点と対策について語られています。
https://digital.asahi.com/articles/ASSCL2CCSSCLUTQP00SM.html
2. 学校の中と外、どちらにも存在する指導の問題
体罰や暴力、性的ハラスメントといった問題は、学校内だけの問題ではありません。
学校外でも繰り返し発生しています。
特に地域クラブやスポーツ少年団などでは、指導者による暴力的指導や性的暴行事件などの事例が報告されています。
昨日にも、柔道の指導者が、10歳の子供に醤油を飲ませ逮捕されるという事件が起きています。
https://digital.asahi.com/articles/ASSCW3DVNSCWUDCB01DM.html
これらの事例は、学校外の指導環境が必ずしも安全ではないことを示しています。
そのため、ただ部活動を地域に移行ですべてがうまくいくと考えるのではなく、問題が起きたときの対策も考えることが必要になります。
3. 地域移行の成功には「質の高い指導者育成」がカギ
地域移行を成功させるには、ただ場所を変えるだけでなく、質の高い指導者を育成し、子どもたちに安心・安全なスポーツ環境を提供することが不可欠です。
そのために必要なこととして、指導者が公認資格を持つことを義務化し、暴力やハラスメントに関するトレーニングを徹底することや、地域ごとの対応のばらつきを防ぐため、国が指導基準や予防策を明確化し、すべてのスポーツクラブが従うようにするなどが考えられます。
アメリカの「セーフスポーツセンター」では、指導者の教育や研修、被害が起こった際の調査・処分を全国的に統括していますが、参考にすべきではないでしょうか。
4. スポーツの多様化と地域移行がもたらす影響
部活動の地域移行が進む中で、サッカーやバスケットボールなどの競技では、すでにユースチームやクラブチームが活動の主流になりつつあります。この傾向は他のスポーツにも広がると予想されます。
多様化の中で注意すべき点
- 勝利至上主義の危険性:結果を重視する風潮が強まると、暴力的な指導や不正行為が横行する可能性があります。
- 子ども中心の環境づくり:単に勝つための指導ではなく、スポーツを通じて心身の成長を促す指導が求められます。
スポーツ指導の場が多様化する今こそ、「どのように子どもたちを育てるべきか」を基軸に制度設計を進めることが重要です。
5. 暴力や性的暴力が子供に与える悪影響
私の体験
スポーツクラブや習い事における暴力は私たちの時代ではよく見受けられました。
その教義の指導と全く関係のない場所で、よその家の子供にいきなり殴りかかって笑っていた大人もいました。
こういった大人に対しては、子供は「嫌だ」とは思うのですが、当時は嫌々従わざるを得ませんでした。
これが、最もエスカレートしたのが、私の中学時代です。
私は中学時代担任で部活の顧問の同性愛者の教師から、日常的に性暴力を振るわれましたが、加害教諭はそれ以外にも「俺の言うことを聞かないのなら松戸を出ていけ」「この町にいられなくしてやる」と脅し続けました。
そして、その脅迫的な指導は、他の生徒に対してもなされました。
そのような指導がされると、当然ですがクラスや部活における人間関係というものは荒れていきます。
当時は教室内や部活内において、何かあったら他人のせいにして罵り合うというのは日常茶飯事でした。
今となっては「おかしい」と思うのですが、当時は私たちは逆らうことができず、服従するしかありませんでした。
このような行為が、子供の人格形成にいい影響を与えるわけはありません。
高校時代の体験
一方で高校時代は、部活の顧問は見た目は怖かったのですが、「好くなことくらい楽しくやれ」という人物でした。
彼が試合に負けたときに「お前のせいで負けた」などと、部員を罵ったことは見たことがありません。
部内においても「あいつのせいで負けた」などという部員はほとんどいませんでした。
高校時代よく言われたのが「全ての選手が、上に行けるわけではない」「上達することも大事だが、それ以外にも大事なことがある」という事です。
たとえそのスポーツが上達しなくても、そのスポーツを好きでいられる。
そして、そのスポーツをしたことで何かを学べるという事は、上達すること以上に大切なことだと思います。
6.部活動の地域移行をやめた熊本県の試み
熊本市が進める「学校での部活動継続」の取り組み
一方で、熊本市教育委員会は、2027年度以降も学校での部活動を継続する方針を採用しました。
https://digital.asahi.com/articles/ASSCW4FSTSCWTIPE01FM.html
熊本県では、希望制で教員や大学生、市職員、インストラクターなどから計1600人の指導者を確保し、それぞれの部活動には顧問と副顧問の2人体制で配置し、質の高い指導を行える環境を整えるとのことです。
また、指導者には適切な報酬を用意し、顧問は時給1600円、副顧問は時給1000円とすることで、労働環境の改善を目指し、この指導体制を支えるため、必要な財源は、市や企業の協力金、公費に加え、保護者負担(生徒1人あたり月3000円)を組み合わせて捻出する方針といいます。
さらに、企業との連携にも力を入れ、協力金を拠出した企業には、生徒の練習着にロゴを掲出するなどの広報活動を特典として提供する仕組みを導入するということです。
これらの施策により、地域全体で部活動を支える新しいモデルを構築し、教育的意義を守りながら持続可能な運営を実現しようとしています。
熊本県では地域のスポーツクラブが全県をカバーしておらず、「十分な受け皿がない」と言います。
また、指導者による体罰や、事故が起きたとき、市が十分な対応をとる必要性があり、そのような理由が部活動の継続につながったといいます。
まだ、正式決定には至っていませんが、地域によってはこういった事情もあるという事は理解しなければいけないと思います。
7.まとめ:子どもたちのために「安全」と「成長」を重視した改革を
部活動の地域移行は、教師の負担軽減だけでなく、子どもたちにより良いスポーツ環境を提供するためのものです。
単なる勝利至上主義では、何も変わりません。
問題が起きたときにしっかりと対応できるシステムが必要です。
また、熊本県のように地域の事情があり部活動を継続する場合でも、他の地域と対応に差があることは好ましくないと言えます。
日本のやり方は大事ですが、学べる部分は海外のやり方からも学ぶべきです。
そして、そこから日本独自の取り組みを進めることで、子どもたちが安心してスポーツができる環境が生まれるのだと思います。
現在は様々な面において過渡期といえます。
この過渡期を乗り越えよりよい環境を構築していくために国や行政がしっかり対応することが必要だと思います。