わかりやすい民法条文

法律を身近に感じてもらうことで、防げる被害を防ぐというのが私の考え方です(いわゆるプロボノ教育です)。

今回は民法の条文のいくつかについて子供でもわかりやすく説明したいと思います。

事例に関しては理解しやすくするためにある程度簡略化しているので、少し不正確な部分もありますがご理解ください。


目次

1. 709条 不法行為

第709条

故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

どんなルール?
誰かにわざとケガをさせたり、物を壊して困らせたら、その人に「ごめんなさい」とお金や壊れた物の代わりをあげなきゃいけないというルールのことです。

事例
たとえば、高橋先生が、佐藤先生の車を傷つけたとします。

この場合、高橋先生は、佐藤先生に対して、車の修理費を弁償しないといけません。


2. 555条 売買契約

第555条

売買は、当事者の一方がある財産権を相手方に移転することを約し、相手方がこれに対してその代金を支払うことを約することによって、その効力を生ずる。

どんなルール?
物を売ったり買ったりするときの約束を守るための条文です。

「この本を500円で買います」「はい、売ります」と言えばわかりやすいと思います。

事例
例えば、秋田くんが本屋さんで、本を1000円で買うことにしたとします。

この場合、秋田くんと本屋さんの間には売買契約が成立します。

そして、秋田君は本屋さんに、1000円を払わなければいけなくなり、本屋さんは、代金の支払いと引き換えに、オモチャを秋田君に渡さなければいけません。


3. 94条 虚偽表示

第94条

① 相手方と通じてした虚偽の意思表示は、無効とする。

② 前項の規定による意思表示の無効は、善意の第三者に対抗することができない。

どんなルール?
ウソの約束をしても、それは本当の約束としてみとめられないということです。

事例
たとえば、ヒロくんが「このオモチャをタクくんにあげるよ!」って言ったけど、実はそのつもりがなく、タクくんもそのことを知っていた場合、ヒロくんはタクくんにオモチャをあげる必要はないという事です。

この場合、仮にヒロくんがタクくんにオモチャを渡していたとしても、ヒロくんは「そのオモチャ返して」という事ができます。

ただ、タクくんがミヨちゃんに「このオモチャあげるよ」といって、オモチャをミヨちゃんにプレゼントした場合は注意が必要です。

この場合、ヒロくんが、ミヨちゃんに「それ僕のオモチャだから返して」と言っても、ミヨちゃんがヒロくんがタクくんにオモチャをあげるつもりがなかったことを知らなかった場合は、ヒロくんは、ミヨちゃんにオモチャを返してもらうことができません。


4. 95条 錯誤

第95条

① 意思表示は、次に掲げる錯誤に基づくものであって、その錯誤が法律行為の目的及び取引上の社会通念に照らして重要なものであるときは、取り消すことができる。

一 意思表示に対応する意思を欠く錯誤

二 表意者が法律行為の基礎とした事情についてのその認識が真実に反する錯誤

② 前項第二号の規定による意思表示の取消しは、その事情が法律行為の基礎とされていることが表示されていたときに限り、することができる。

③ 錯誤が表意者の重大な過失によるものであった場合には、次に掲げる場合を除き、第一項の規定による意思表示の取消しをすることができない。

一 相手方が表意者に錯誤があることを知り、又は重大な過失によって知らなかったとき。

二 相手方が表意者と同一の錯誤に陥っていたとき。

④ 第一項の規定による意思表示の取消しは、善意でかつ過失がない第三者に対抗することができない。

どんなルール?
わかりやすく言えば、間違えて約束しちゃった場合は、その約束をやめることができるよっていうルールのことです。

事例
たとえば、太郎君のおとうさんが不動産屋さんからAという家を買ったとします。

ところが、太郎君のお父さんがAと思っていた家は、違う家で、実際のAという家は、非常に不便な場所にある家だったとします。

この場合、太郎君のお父さんは、不動産屋さんとの売買契約を取り消すことができます。


5. 96条 詐欺・強迫

第96条

① 詐欺又は強迫による意思表示は、取り消すことができる。

② 相手方に対する意思表示について第三者が詐欺を行った場合においては、相手方がその事実を知り、又は知ることができたときに限り、その意思表示を取り消すことができる。

③ 前二項の規定による詐欺による意思表示の取消しは、善意でかつ過失がない第三者に対抗することができない。

どんなルール?
ウソをついたり、おどかしたりしてさせた約束は、守らなくてもいいよっていうルールのことです。

事例

山田さんが「これ、本物の金貨だよ」とウソをついて坂田さんから5000円をもらった場合、坂田さんは山田さんにだまされているので、坂田さんはお金を返してもらうことができます。


6. 99条 代理

第99条

① 代理人がその権限内において本人のためにすることを示してした意思表示は、本人に対して直接にその効力を生ずる。

② 前項の規定は、第三者が代理人に対してした意思表示について準用する。

どんなルール?
代わりに約束してもらうことができるルールのことです。「代理人」というのは「本人の代わりにやる人」のことです。

事例
剛田のお母さんが「タケシの代わりにこの本を買います!」って約束してお金を払った場合、売買契約が成立するので、タケシくんがその本をもらえることになります。


7. 109条 表見代理

第109条

① 第三者に対して他人に代理権を与えた旨を表示した者は、その代理権の範囲内においてその他人が第三者との間でした行為について、その責任を負う。ただし、第三者が、その他人が代理権を与えられていないことを知り、又は過失によって知らなかったときは、この限りでない。

② 第三者に対して他人に代理権を与えた旨を表示した者は、その代理権の範囲内においてその他人が第三者との間で行為をしたとすれば前項の規定によりその責任を負うべき場合において、その他人が第三者との間でその代理権の範囲外の行為をしたときは、第三者がその行為についてその他人の代理権があると信ずべき正当な理由があるときに限り、その行為についての責任を負う。

どんなルール?
本人が、本当は代わりの人に頼んでないけど、相手が「本人に頼まれたんだ」と信じてしまったとき、約束が守られることがあります。

事例
高橋さんの会社では、高橋さんの妹が「専務」という肩書になっていますが、実際は、高橋さんの妹は、会社の中では何の権限もない肩書だけの「専務」でした。

この場合、高橋さんの妹が、近くの会社に行き、「私が会社を代表してきたので契約をしてください」と言った場合、たとえ高橋さんが妹に、契約することを許可していなくても、契約が成立することがあります。


8. 162条など 取得時効

第162条

① 20年間、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した者は、その所有権を取得する。

② 10年間、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した者は、その占有の開始の時に、善意であり、かつ、過失がなかったときは、その所有権を取得する。

どんなルール?
長い間ちゃんと使っていたら、その物が自分のものになるっていうルールのことです。

事例
加藤くんが10年の間、「これは自分のものだ」と思って使っていた自転車があって、誰も「返して!」と言わなかったら、その自転車は加藤くんのものになります。


9. 166条など 消滅時効

第166条

① 債権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。

一 債権者が権利を行使することができることを知った時から5年間行使しないとき。

二 権利を行使することができる時から10年間行使しないとき。

② 債権又は所有権以外の財産権は、権利を行使することができる時から20年間行使しないときは、時効によって消滅する。

③ 前二項の規定は、始期付権利又は停止条件付権利の目的物を占有する第三者のために、その占有の開始の時から取得時効が進行することを妨げない。ただし、権利者は、その時効を更新するため、いつでも占有者の承認を求めることができる。

どんなルール?
長い間何もしないでいたら、もらえるはずのものがもらえなくなるっていうルールのことです。

事例
山田くんが「6年前に貸した500円返して!」と佐藤くんに言った場合、「もう遅いよ」ってなって、お金を返してもらえなくなる場合があります。

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