選考中の学生を狙うセクハラ:その背景と防止策

就活中のセクハラに関する話題が後を絶ちません。今回はABEMAニュースで報道された就活セクハラの話をもとに、この問題を考えてみたいと思います。

目次

1.就活セクハラの実態

ABEMAニュースでは、就職活動中の関口さんが、男性役員から「面接の練習をする」とホテルに誘われるなどのセクハラ被害を受けたエピソードが紹介されています。

面接後、役員から「次はほぼ最終だ」と夜のホテルバーに呼び出され、性的な話題を振られた上、部屋に強引に連れて行かれそうになりました。

関口さんがこれを拒否すると、不採用通知を受け取ったそうです。

この動画では被害者が断ることが難しい状況であったことが強調されていますが、私もこの気持ちはよくわかります。

私は中学時代担任で部活の顧問だった同性愛者の教師から性被害に遭いました。

就活セクハラとは少し異なるのですが、加害教諭は私が嫌がると「高校に行けなくてもいいのか」「周りの生徒にお前が何をしているのか言うぞ(私は被害者なのですが…)」「お前の言うことなど誰も信じない」などと言われ、精神を畏怖させられ続けました。

関口さんは断っていますが、断れなくなりセクハラ被害に遭った方も非常に多いと思います。

世間が言うように「嫌なら断れよ」と一言で片づけられないのが、立場を利用したセクハラの恐ろしさだと思います。

2. セクハラの頻発と背景

AMEMAニュースでは、他の例として、大手企業のFacebookページで接触した社員から夜の面談を求められたケースも挙げられています。

このようなケースでは、複数の女性が同様の被害に遭っていたことも確認されたそうです。

最近は就職をしてもすぐにやめる若者が多いと言われています。

しかし、就職というものは自分の将来と切っても切り離せないものです。

誰だって自分の人生に対して明るい未来を描きたいですからね。

そのような若者の気持ちを利用して、役員や人事担当が権力を背景に若い女性に不適切なアプローチをしていることが問題視されています。

3. 声を上げづらい状況

被害を誰かに相談することが難しい理由として、「不利になる恐れ」や「他者の無理解」、「自慢だと誤解される」などが挙げられています。

SNSでの告発に対しても、被害者への批判や無理解が寄せられることが課題となっています。

私はこの気持ちがよくわかります。

私が遭ったのは、同性愛者の教師からの性被害だったのですが、加害教諭は嫌がる私に対して、「お前がこういうことをされているのがバレてもいいのか」と私を脅しました。

先ほども書きましたが「お前の言うことなど誰も信じない」と言われたこともあります。

実は、中学時代私は女性と交際していました。といっても、それほどの付き合いではありません。

これは「私が異性愛者であって、同性愛的な性癖を持っていない」という事を分かってもらうためにいつも書いています。

中学3年の夏休みに、その女性の部活のコンクールに無理やり見に行かされたのですが、その時もその相手と話すのが嫌だったので、クラスでよく話をする女子生徒ともう一人の女子生徒とずっと一緒に話をしていました。

当然ですが、肉体的な接触など全くなかったですし…(結局相手とはあまり仲が良くなかったので高校進学後すぐに分かれています)。

いろいろ書いていますが、私が子供のころから異性愛者であり、仲の良い女子生徒が数多くいたというのは明らかな事実です。

しかし、そんな私でも「周囲に同性愛者と思われる」という恐怖は相当なものでした。

異性間であれば「誘ったんじゃないの?」などと言われることもあると思います。

それ以外にも、男性が女性から被害に遭うと「ラッキーじゃないか」というコメントもネット上に散見されるときもあります。

そのような状況下にあっては、自身の被害を申告するというのは非常に大変なことです。

被害者の心情への無理解がいまだなくならないということで、被害が表に出てこないという事は、非常に悔しいところです。

4. 問題解決の提案と課題

この問題の解決には、被害者への偏見を取り除き、制度や仕組みでの対応が必要です。

厚生労働省は法改正を目指していますが、実効性は企業の取り組み次第とされています。

厚生労働省が個々の企業の制度や仕組みのすべてを管理することは困難なのかもしれませんが、企業の自助努力にすべて任せることは、問題ではないかと個人的には感じます。

関口さんは「志望学生との夜の会食禁止」を提案しており、相談窓口だけでは不十分だと指摘しています。

これは私も賛成です。

私の話で申し訳ないのですが、私が中学時代性被害に遭ったときは、事務準備室などに鍵をかけて閉じ込められていました。

放課後、生徒がいなくなった体育館に二人で残されたときもあります。

精神的にある程度回復した現在感じるのは「こういった指導は必要ない」ということです。

小学校3,4年時の先生は、誰かと個人的な話をするときは「ちょっとみんな廊下に出てくれる」と言って、話を聞けない状態にしていました。

5,6年時の先生は「ちょっと机下げてもらっていい」と子供に言って話の内容が周囲に漏れないようにしていました。

指導される子供の側からしても、これで困るという事はあまりなかったと記憶しています。

もし、他人に聞かれたくない話がある場合でも、他の教師が同席することで困るという事情は、ほとんど存在しないと思います(私の場合ですが…)。

就活での「夜の会食」も同じですよね。

別に二人きりで会わないと、その会社の新入社員の採用に支障をきたすという事はないと思います。

学校にしても就活にしても、密室内で二人きりで会うという必要はないと思います。

5.男子学生もセクハラ被害に

ABEMAニュースでは、男子学生もセクハラ被害に遭うことが記事になっています。

https://times.abema.tv/articles/-/10158316?page=1

厚生労働省委託事業 職場のハラスメントに関する実態調査(2020年度)によると、就職活動中、もしくはインターンシップ参加中に4人に1人がセクハラを経験しているというといいますが、男女別では男性の方が高く、男女の学歴別では男性の大学院生が最も高い。

私自身の体験では「それもあるだろう」と思うのですが、世間的には驚くべきことだと思います。

同性愛者や女性から男性へのセクハラやわいせつ行為というのは非常に多いです。

今まであまり語られることがなかったのは、おそらく「男のくせにみっともない」などと言われることを被害者が恐れていたからだと思います。

そのような意識が変わってきて、男性に対するセクハラも存在することが認識されていることはいいことだと思います。

6.社会の変化と働きやすい環境の重要性

現在4人に1人が就活セクハラを受けたことがあると言います。

セクハラを受けた人のうち24.7%が「その後何もしなかった」といいます。

就活セクハラにあった関口さんは「相談したら不利になるのでは」と思い、声をあげられなかったといいます。

学校の教師から性被害に遭った生徒などは「逆らったら内申点を下げる」「行きたい学校に進学できなくさせる」と脅される場合があります。

就活にしても進学にしても、自分の将来とかかわる重大な問題です。

それを理由に脅されてしまうと何もできなくなるのはある意味当たり前だと思います。

ちなみに、就活セクハラ被害の中で最も多かったのは「性的な冗談やからかい」、他にも「食事やデートへの執拗な誘い」「不必要な体への接触」などだそうですが、いずれも就職の採用面接にとって不要なものばかりです。

私が高校生の時、日本はバブル期でした。

社会人の中には、営業中にパチンコに行っている人もいましたし、20代で年収が1000万円を余裕で超える方もいました(現在もいるでしょうが)。

当時、世界のトップ100には日本企業が多く名を連ねていました。

しかし、現在、世界のトップ100に名を連ねる日本企業はほとんどありません。

学者の論文引用数も、アメリカ、中国に抜かれただけでなく、ドイツやイタリアの後塵を拝しています。

一方で、いったん就職してもすぐに会社を辞める若者は増え、海外に仕事を求める若者も増えています。

当然ですが、就活セクハラがすべての原因というつもりはありません。

そんなことを言えば、何かあるごとに「あいつが悪い」「改悪」と大騒ぎする方々と同じになってしまいます。

それでは会話に生産性が生まれません。

ただ、少子化が進む現在の日本にでは、「働きやすい会社」「風通しの良い会社」が好まれるのは事実です。

誰が好き好んで、上司がセクハラをする会社に就職しようと思うのでしょうか?

個人的な意見ですが、悪質なセクハラなどが認められた会社に対しては、厚生労働省からの指導や会社名の公表のようなペナルティーを科すべきだと思います。

7.小さな問題を見逃さない社会を目指して

私に危害を加えた加害教師は、単に性暴力をふるうだけでなく、勤務時間中に生徒を車に乗せてボーリングに行ったり、授業中に生徒の悪口を頻繁に言ったりとやりたい放題でした。

加害教諭の指導方針に異議を唱えた親の子供は、学活中や授業中に名前をあげられて、生徒全員の前でいびられていました。

それ以外にも、女子生徒が男子生徒から胸やおしりを触られても何も言わず放置したり、「ちょっとくらいいじめがあってもいいじゃないか」と問題を放置したりとやりたい放題でした。

性加害があったから「問題教師」なのではなく、それがなくても十分に「問題教師」と言える人物でした。

最初からいきなり大きな問題が発生することはあまり多くありません。

「この程度なら大丈夫だろう」と小さな問題を放置したことで、加害者が「誰も言わないのなら大丈夫だろう」と思い大きな問題を引き起こすようになることがほとんどだと思います。

大きな問題が発生するのを防ぐには、小さな問題が起きたときに「ちょっと誘っただけじゃないか」「ちょっとからかっただけ」と思わずに、雇う側と雇われる側の両方が、互いにいい距離感をもって接触できる環境を構築することが大事だと思います。

就職をするのは若者だけではありません。転職をする方もいます。

これからの日本社会では、すべての方がしっかりと働ける環境を作る必要があります。

そのためには、制度や仕組みの見直しと、社会的な意識改革が必要です。

企業だけでなく、社会全体がこの問題に真剣に向き合い、被害者が安心して声を上げられる環境を作ることが求められるのではないでしょうか。

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